『生き生きとする方法』

古賀ヤスノリ イラスト こがやすのり
 哲学者のバートランド・ラッセルという人が、人はやすやすと欲望が満たされると無気力になる、というようなことを言っています。つまり努力しなくても欲しいものが手に入るのだから、押し返す壁もない。永遠にノーストレスですべて手に入るなら、最後には無気力になるのも無理はありません。
 たとえば、歌手を目指して頑張っている人がいるとします。その人の友人が、自分が経営している店でギャラをだすから歌ってくれという。さらに知人がイベントで歌う仕事を紹介してくれる。そうして努力せずにやすやすと仕事をもらう経験をすることで、彼は当初のヤル気をなくしていく。こう考えるとヤル気は、簡単でないもを“独力で”獲得しようとする時に発生するものだということが分かります。
 何でも思い通りにいく環境に、長くいると無気力になる。便利な世の中とはいえ、ある程度は、簡単には事が進まない世界と対峙することが、やる気を保つための条件です。なかなか上手くいかない世界で踏ん張ってみる。そして独力で少しずつ「自分の結果」を出していく。自分に合った「押し返すべき壁」を探すことが、生き生きとした日々を送るための秘訣なのです。

AUTOPOIESIS 135/ illustration and text by : Yasunori Koga
古賀ヤスノリ サイト→『Green Identity』

Scroll to top