『セルフカウンセリング』

イラスト こがやすのり

 自分のことは自分が一番わかっている。これは誰しもが暗黙に思っていることでしょう。しかし「本当の自分」とは何かという問いに対しては、自信をもってこうだと答える人はそう多くはないはずです。なぜなら人は、世間体や願望、あるいは自己否定などによって「別の自分」を生きていることも多いからです。そうしていつしか「本当の自分」を忘れてしまう。しかしあまりにも「本当の自分」を無視し続け、別の目的に支配されると、あとあと問題が起きてきます。
 「本当の自分」を無視して別人になろうとした結果、心の不安定をまねいてしまう。そうしてカウンセリングに通うようになるといったことは、現代ではよく耳にする話です。カウンセリングを通して、見失った「本当の自分」を再発見する。そして心も正常化していく。もし自分自身で「本当の自分」をしっかりと把握していれば、当然そのような問題は起きにくくなります。
 社会生活を送るかぎり、ある程度は自分以外のシステムに従わざるを得ません。つまりただ生活し従っているだけだと「本当の自分」は見失われやすい。そこで「本当の自分」が目に見える形で映し出され、自分でも確認できるものが役に立ちます。カウンセリングでは、その人の「本当の自分」を再発見する手立てとして箱庭をつることがあります。この箱庭は個人のいわば創作物です。よって自分らしい「絵」を描くことでも、「本当の自分」を視覚的に再発見する手立てとなります。「自分の心とのつながりのある絵」を描くことが出来れば、それは現代におけるカウンセリングの効果を自分自身でもつことになるのです。

AUTOPOIESIS 197/ illustration and text by : Yasunori Koga
こがやすのり サイト→『Green Identity』

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