『蝶という変化』

イラスト こがやすのり

 蝶は最初はイモ虫の形をしています。餌にありつくまで直進を続け、栄養摂取を繰り返していく。しかしある時その仕事を完全に放棄して全く動かなくなります。イモ虫は硬い殻に覆われたサナギへと変化し、活動が停止したかに見えます。しかし硬い殻の中では体が液体となって形を組み替える「内的変化」が活発に行われます。これは活発だったイモ虫以上に大きな活動(変化)であるということができます。
 人間もこれと同じ所があります。繰り返しの活動は活発にみえる。しかし別の視点から見れば「内的変化」という重要な仕事に着手する前段階にとどまっているとも言えます。逆に外から見れば活動がほとんど止まっているように見えても、実は「内的変化」のために全てのエネルギーを抑制している段階ということもあります。つまり「大きな変化」のためのサナギの時期に来ている。よって外からみて動きがないからと、サナギの殻を破ると大変なことになります。
 蝶はサナギの時期を受け入れることではじめて蝶になることができる。もちろんその前にはイモ虫の時期も必要不可欠なプロセスです。サナギの期間は非生産的にみえるだけに、本人も周囲も早まって殻を破りがちになります。サナギの期間を耐えて待ち続けるには、理屈を退けて直感的に「未来の可能性」を信じる必要があります。非生産的な道の先に、超生産的な発展がやってくる。この矛盾を受け入れるには、それまでの理屈をすべて捨てなければなりません。しかしそれこそが進化というものなのです。

AUTOPOIESIS 221/ illustration and text by : Yasunori Koga
こがやすのり サイト→『Green Identity』

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