『有機的共同体』

イラスト 古賀ヤスノリ Yasunori Koga

 「類は友を呼ぶ」という言葉があるように、人は同じ趣味や考えの人たちと同質の集まりをつくります。同質傾向の集団は安定するので当然だと言えます。しかしあまりに同質すぎると、個々の違いが溶けてしまい、一つの水溜まりのようになります。またこの安定は、外部からの異質を受け付けないことで維持されるので、発展の要素に乏しい側面をもっています。
 よく海外に長期滞在したひとが、日本人の集まりにばかり顔を出し、その国の人たちと接点を持たない人がいます。この例は、同質傾向の「保守的なデメリット」が、わかりやすい形で現れています。これに対して、全く違った傾向の人たちとの集まりが、安定した形で存在できればどうか。お互いに影響を与え合い、相乗効果と相補性により掛け算的な発展があります。しかも水溜りにはならない。
 異質なもの同士を安定させるには、同質傾向の集まりよりも、はるかに高度な指標を必要とします。それには個々が集団に依存せずに、各自がソロでやれることが前提条件です。さらに即興的な協力関係にも対応できる。言うなれば個々の役割が固定化されたクラシックに対して、それぞれがソロプレイヤーでありテーマにはいると即興的に全体に参加するジャズのような「有機的共同体」です。異質傾向の共同体は、個性が溶けることなく全体と関係をもてる、高次元の共同体なのです。

AUTOPOIESIS 256/ illustration and text by : Yasunori Koga
古賀ヤスノリ サイト→『Green Identity』

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