『科学と方法』

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「確率とは蓋然の意であって確実の反対にほかならない」
(アンリ・ポアンカレ)

 方法とは「正しい選択」であり、科学とは有限な時間の中で“不毛な組み合わせを排除する”いわば「思考の経済」(マッハ)である。ポアンカレは、科学の前提をなす、数学と定理の発見方法から、論理学、力学、天文学をも丁寧に論じていく。そして、演繹を超える「直感」こそが全ての出発点であることを示唆する。確率論が明らかに不確実であると論ずる本書は、マーケティングやコンサルの前提に疑問符を突きつける。少々難解ではあるが、社会のあらゆる問題点を修正するに余りある“次元を超える”一冊。

book / 021『科学と方法』アンリ・ポアンカレ: Originally published in 1908
illustration and text by : Yasunori Koga

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『群衆心理』

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「集団になれば個人の知能は消え失せる」
(ギュスターヴ・ル・ボン)

 群衆化した人はどのような心理に変化してしまうのか。いや群衆の中の個人は、心理自体を喪失する。そして感情も同一方向へと固定され、個人の知的判断は消え失せてしまう。そうなった人をル・ボンは原始人あるいは野蛮人と表現する。群衆は過剰に保守的になり、新しい事実を嫌悪する。そして刺激の赴くままに行動する。メディアに扇動されやすい現代人は、いつのまにか原始人に成り下がっているのかもしれない。容赦ないル・ボンの考察が個人主義へ道を切り開く、自由を確保するための一冊。

book / 020『群衆心理』ギュスターヴ・ル・ボン: Originally published in 1895
illustration and text by : Yasunori Koga

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『生命とは何か』

古賀ヤスノリ イラスと
「ものごとは放っておけば自然に無秩序な状態へと変わってゆく」
(エルヴィン・シュレーディンガー)

 熱力学第二法則(エントロピーの原理)を世に知らしめた、シュレーディンガーの代表的な著書。生命と非生命の違いはなにか。そもそも生命とはなにか。これまでの統計に依存した物理学や化学では解明できなかった領域を、画期的な視点から分析する。複雑な有機化合物であり、高度な秩序を具えた“一団の原子”でもある生命体。その秩序を維持するシステムは「エントロピー回避」のプログラムを具えている。環境から秩序(低エントロピー)を吸収し、内部の無秩序(高エントロピー)を相殺することで生きる。生命維持欠かせない「交換の原理」は、あらゆる領域を正常化させる普遍的原理なのです。

book / 019『生命とは何か』エルヴィン・シュレーディンガー: Originally published in 1944
illustration and text by : Yasunori Koga

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『建築はどうあるべきか』

アンドレ・ルロワ=グラーン「芸術家の直観力は、過度の機械化に対する矯正手段となるのです」
(ヴァルター・グロピウス)
 
 建築界の巨匠、ヴァルター・グロピウスによる文化芸術論。グロピウスは序文において、「市民は文化のシンボルとしてのアポロンの力(知性)を回復させるよう、要求されている」としいます。芸術家と理解ある大衆が一体となって、はじめて真の文化が形成される。そのためには、すべての人に「かたちを創造する能力」をよみがえらせる必要がある。過度な産業化によって失われた、「美を直感する力」を復活させ、見えなくなった全体を再び浮かび上がらせる。建築を超えて芸術文化の再生を説く、美のための建築論です。

book / 018『建築はどうあるべきか』ヴァルター・グロピウス: Originally published in 1972
illustration and text by : Yasunori Koga

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『陰翳礼讃』

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「陰翳の作用を離れて美はないと思う」
(谷崎潤一郎)

 西洋文化が入る以前にあった、日本独自の美意識。それは照明のない暗がりの部屋で発見した「陰翳の美」。そこに「優雅」や「花鳥風月」もあった。翳りという環境は、物体を風流で古色を帯びた美へと変化させる。文明の発達により、照明で全てを照らした世界は、物と物との間にある陰翳のあやを消し去ってしまう。谷崎は、日本独自の文明を模索しながら、文明の利器を鵜呑みにする社会に警鐘を鳴らす。名文で美を語る随筆は、まさにそれ自体が「美」と言える一冊です。

book / 017『陰翳礼讃』谷崎潤一郎: Originally published in 1939
illustration and text by : Yasunori Koga

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