『ゴダール映画史』

「制約こそがスタイルとリズムをつくり出す」
(ジャン=リュック・ゴダール)

 ヌーヴェルヴァーグの旗手、ゴダールが、1978年にモントリオールで行った講義録。彼が言う“制約”とは「現実」であり「真実」である。映画監督のあらゆる「決断」もそこから必然的に行われていく。映像は「現実」そのものであり、言語を通さずに世界を見ることを可能にした。ゆえに脚本に依存する映画には矛盾がり、その矛盾は現場で修正していく。ゴダールは矢を放つのではなく、矢そのものであれという。つまり映画を作るには、自らが現実たれ、ということなのだ。“映像の現象学”と呼ぶべき名講義録です。

book / 016『ゴダール映画史』ジャン=リュック・ゴダール: Originally published in 1982
illustration and text by : Yasunori Koga

古賀ヤスノリHP→『Greenn Identity』

『茶の本』

古賀ヤスノリ イラスト
「真の美は、不完全を心の中で完全なものにする人だけが発見することができる」
(岡倉天心)

岡倉天心が、明治三十九年にニューヨークで出版した「茶の湯」の真髄。薬用から飲料へ。八世紀の中国で娯楽から詩へと発展した茶は、十五世紀の日本において茶道へとたかめられた。それは道教であり善の儀式でもある。そこに関わる茶人や数寄屋、花たちはすべて“美との一体感”のために存在する。はかなさ、未完の美、非対称、非反復性、どれもが「相対の美学」を構成する。茶道は、日常のむなくるしい諸事情の中にある美を崇拝する儀式。日本が世界に誇るものは産業などではない。茶の湯の精神なのだ。

book / 015『茶の本』岡倉天心: Originally published in 1906
illustration and text by : Yasunori Koga

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『母性社会日本の病理』

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「(敵は)われわれ母性文化の本城である『家』の中にはいりこんでいる」
(河合隼雄)

臨床心理学者が、対人恐怖症の人々と接するうちに発見した母性文化。その見えない構造にメスを入れた画期的な論考。母性原理は、生み育てるもの。それに対する否定的な側面は、呑み込み、しがみつき、死に至らしめる。そのような混沌を、全てを融合し未分化な状態を作り出す“グレートマザー”に見る。その内部では全てが許される反面、自我の確立や善悪判断を失う。そのような「融合」ではなく、「自立」に基づいて他者と新しい関係を結ぶ必要がある。自我を飲み込むグレートマザーとの戦い、日本の現状に対する決定的な処方となりうる一冊。

book / 014『母性社会日本の病理』河合隼雄: Originally published in 1976
illustration and text by : Yasunori Koga

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『学校と社会』

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「教育には初等も高等もない。ただあるのは教育だけである」
(ジョン・デューイ)

 アメリカが誇るプラグマティズム哲学の代表格、デューイによる教育論。学校が陥りやすい、学校と生活の乖離(学校の孤立)を、社会からのフィードバックを取り入れ、再び結合させる。論理(学校)と実践(生活)の相互作用を取り戻すことで、“手本の奴隷制度”ではない、創意工夫や主体性を発達させる“自立したシステム”へと昇華させる。教育とは本来「ひき出す」ことを意味する。機械的な功利性からの解放が、学校を芸術と科学、歴史の拠点たらしめるとデューイは言う。教育制度の形骸化から子どもたちを守る、まさにプラグマティズムな教育の書。

book / 013『学校と社会』ジョン・デューイ: Originally published in 1915
illustration and text by : Yasunori Koga

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『現代哲学』

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「持続性を認めるために、我々は実体という概念を考えだす」
(バートランド・ラッセル)

本書は哲学の入門書として書かれたものであるが、量子力学から相対性理論までもカバーした徹底的なものである。その意味では入門書とは言いにくい。しかし「二人の人が厳密に同じ対象を見ることは決してない」という物理空間と知覚空間の非対称性を、科学的な知識を裏付けながら知るには最適の本である。認識と連合法則の関係。因果論の逆行不可能性。科学的でありながらも、科学批判という「哲学の使命」を貫く論考。人びとが知識として疑いない地平。そのパースペクティブを補正する力は、歪んだは資本主義を正す力を持つ。真に実践的な名著。

book / 012『現代哲学』バートランド・ラッセル: Originally published in 1927
illustration and text by : Yasunori Koga

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