『生命とは何か』

古賀ヤスノリ イラスと
「ものごとは放っておけば自然に無秩序な状態へと変わってゆく」
(エルヴィン・シュレーディンガー)

 熱力学第二法則(エントロピーの原理)を世に知らしめた、シュレーディンガーの代表的な著書。生命と非生命の違いはなにか。そもそも生命とはなにか。これまでの統計に依存した物理学や化学では解明できなかった領域を、画期的な視点から分析する。複雑な有機化合物であり、高度な秩序を具えた“一団の原子”でもある生命体。その秩序を維持するシステムは「エントロピー回避」のプログラムを具えている。環境から秩序(低エントロピー)を吸収し、内部の無秩序(高エントロピー)を相殺することで生きる。生命維持欠かせない「交換の原理」は、あらゆる領域を正常化させる普遍的原理なのです。

book / 019『生命とは何か』エルヴィン・シュレーディンガー: Originally published in 1944
illustration and text by : Yasunori Koga

古賀ヤスノリHP→『Greenn Identity』

『建築はどうあるべきか』

アンドレ・ルロワ=グラーン「芸術家の直観力は、過度の機械化に対する矯正手段となるのです」
(ヴァルター・グロピウス)
 
 建築界の巨匠、ヴァルター・グロピウスによる文化芸術論。グロピウスは序文において、「市民は文化のシンボルとしてのアポロンの力(知性)を回復させるよう、要求されている」としいます。芸術家と理解ある大衆が一体となって、はじめて真の文化が形成される。そのためには、すべての人に「かたちを創造する能力」をよみがえらせる必要がある。過度な産業化によって失われた、「美を直感する力」を復活させ、見えなくなった全体を再び浮かび上がらせる。建築を超えて芸術文化の再生を説く、美のための建築論です。

book / 018『建築はどうあるべきか』ヴァルター・グロピウス: Originally published in 1972
illustration and text by : Yasunori Koga

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『陰翳礼讃』

古賀ヤスノリ イラスト
「陰翳の作用を離れて美はないと思う」
(谷崎潤一郎)

 西洋文化が入る以前にあった、日本独自の美意識。それは照明のない暗がりの部屋で発見した「陰翳の美」。そこに「優雅」や「花鳥風月」もあった。翳りという環境は、物体を風流で古色を帯びた美へと変化させる。文明の発達により、照明で全てを照らした世界は、物と物との間にある陰翳のあやを消し去ってしまう。谷崎は、日本独自の文明を模索しながら、文明の利器を鵜呑みにする社会に警鐘を鳴らす。名文で美を語る随筆は、まさにそれ自体が「美」と言える一冊です。

book / 017『陰翳礼讃』谷崎潤一郎: Originally published in 1939
illustration and text by : Yasunori Koga

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『ゴダール映画史』

「制約こそがスタイルとリズムをつくり出す」
(ジャン=リュック・ゴダール)

 ヌーヴェルヴァーグの旗手、ゴダールが、1978年にモントリオールで行った講義録。彼が言う“制約”とは「現実」であり「真実」である。映画監督のあらゆる「決断」もそこから必然的に行われていく。映像は「現実」そのものであり、言語を通さずに世界を見ることを可能にした。ゆえに脚本に依存する映画には矛盾がり、その矛盾は現場で修正していく。ゴダールは矢を放つのではなく、矢そのものであれという。つまり映画を作るには、自らが現実たれ、ということなのだ。“映像の現象学”と呼ぶべき名講義録です。

book / 016『ゴダール映画史』ジャン=リュック・ゴダール: Originally published in 1982
illustration and text by : Yasunori Koga

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『茶の本』

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「真の美は、不完全を心の中で完全なものにする人だけが発見することができる」
(岡倉天心)

岡倉天心が、明治三十九年にニューヨークで出版した「茶の湯」の真髄。薬用から飲料へ。八世紀の中国で娯楽から詩へと発展した茶は、十五世紀の日本において茶道へとたかめられた。それは道教であり善の儀式でもある。そこに関わる茶人や数寄屋、花たちはすべて“美との一体感”のために存在する。はかなさ、未完の美、非対称、非反復性、どれもが「相対の美学」を構成する。茶道は、日常のむなくるしい諸事情の中にある美を崇拝する儀式。日本が世界に誇るものは産業などではない。茶の湯の精神なのだ。

book / 015『茶の本』岡倉天心: Originally published in 1906
illustration and text by : Yasunori Koga

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