『複製された男』

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 ある日、映画のなかに自分そっくりの人物を発見する主人公。その人物は、自由奔放な生活を送る「もう一人の自分」であった。2人の遭遇はお互いの妻をも巻き込みながら、意表をつくラストへと吸い込まれてゆく。
注目の奇才、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督とジェイク・ギレンホールが組んだ二作目。前作「プリズナーズ」ほどの完成度ではないものの、実験的な手法が随所に見られる前衛的な作品である。タイトル通り、複製された男との遭遇がメインとして描かれている。しかし、主人公が大学の講義で語る「支配の構造」がもう一つのテーマである。再三登場する蜘蛛。そして母親や妻のセリフが暗示しているのは、結婚制度と権力支配の関係である。フィルターを活かした極端な色調と、奇妙な音楽がSFのような雰囲気を作り出す。テーマを異空間に置き換えることで、事実を浮き彫りにする。驚くべき才能を秘めた監督による、最先端の試みがここにある。

vol. 033 「複製された男」 2014年 カナダ・スペイン 90分 監督 ドゥニ・ヴィルヌーヴ
illustration and text by : Yasunori Koga

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『ロストチルドレン』

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 一つ目族なるカルト教団によって、街から連れ去られる子供たち。 弟を連れ去られたサーカスの怪力男は、子供窃盗団の少女ミュエットと共に弟の捜索へと向かう。
世界的にヒットした「アメリ」の監督、ジャン=ピエール・ジュネが作り出した奇怪なダーク・ファンタジー。ストーリーはいたって単純。しかし博士が自ら作ったクローンや、こどもの夢を盗む老化の早い男など、深いメッセージ性に富む内容となっている。子供を連れ去る「一つ目族」とは、富や権力によって片目しか開けない「大人」のメタファーでもあるのだ。ジャン=ピエール・ジュネのまさに両目で作りあげた、イマジネーション豊かな快作。

vol. 032 「ロストチルドレン」 1995年 フランス112分 監督ジャン=ピエール・ジュネ
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『宇宙戦争』

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 地底から現れた巨大マシン。それは遠い昔に宇宙人によって埋められたものだった。科学の差によって圧倒される人間たち。なすすべなく逃げまどう中、少しずつ宇宙人の目的が 明らかとなっていく。
この映画はH.G.ウェルズの同名小説を映画化したもの。賛否両論あって、絶賛する人もあれば駄作という人もいる。個人的にはとても良い映画だとおもう。特に映像センスは抜群。名カメラマン、ヤヌス・カミンスキーのフレーミングと明暗のバランスは見事としか言いようがない。過去の大戦を彷彿とさせる情景。人間が狩られる側に立つことで、我々が動物へ行っている事を再認識させられる。あっさりしたラストも含め、自然淘汰を暗示させる生物学的な映画である。

vol. 031 「宇宙戦争」 2005年 アメリカ116分 監督スティーヴン・スピルバーグ
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『カッコウの巣の上で』

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 刑務所の強制労働から逃れるために、精神異常を装う主人公。彼が精神病院で見たものは、薬物治療と婦長に怯える患者たちだった。婦長の圧政に反撥した主人公は、病院からの逃走を図ろうとする。
この映画の面白い所は、病院内の人間関係をフロイト的に見ることが出来るところである。 「エス」である主人公は、「超自我」である婦長の監視を振り切り、自由を獲得しようとする。 それを目の当たりにした患者たちは「自我」を広げようとする。 これはまさに精神分析のモデルそのもの。ミロシュ・フォアマンの天才的な演出と、 ジャック・ニコルソンの凄まじい演技が融合したまさに名作。病んだ現代社会の処方箋となりうる映画である。

vol. 030 「カッコウの巣の上で」 1975年 アメリイア133分 監督ミロス・フォアマン
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『パリ・テキサス』

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 妻子を捨てて失踪した主人公トラヴィス。彼は空白の四年間を背にふたたび弟の前に現れる。 不在だった四年間の出来事を受け入れていくトラヴィス。そして再開した息子とともに、姿を消した妻をさがす旅へと向かう。
映画ファンの間では不動の人気を誇るロードムービー。心を閉ざした主人公と、テキサスの乾いた大地が独特の雰囲気を作り出す。ロビー・ミュラーの撮影も実に美しい。ハリー・ディーン・スタントンやナスターシャ・キンスキーの演技も秀逸だ。カンヌでもパルムドール受賞ということで、世界が認める一作である。しかしこの映画は「現実からの逃避」を正当化するような見方が出来るという点に、誤解を生む要素を秘めている。実際この作品全体が語るのは「逃避の末路」である。つまり多くの人々が敬遠しがちな悲劇の物語なのだ。

vol. 029 「パリ・テキサス」 1984年 西ドイツ・フランス 147分 監督ヴィム・ベンダース
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