蝶になるにはサナギの時間が必要である。自然にサナギの殻が破れるまで、殻の中で新しい組み替えを繰り返す。しかし自然にサナギの殻を破り、外へ出て行くタイミングを逃すと問題が発生します。外へ出るのが怖くなり、永遠と殻に閉じこもることになる。サナギの殻に閉じこもることの重要性は「適切な期間」に限られます。それを過ぎれば無意味どころか大きな害がある。
通常は自然にサナギの殻を破るタイミングはやってきます。それが自然の摂理です。しかしサナギの殻が自分自身で作った殻ではなく、周囲によって人工的に作られた殻だとすれば外へ出るための「自然なタイミング」はやってこない。例えば周囲から押し付けられて出来たような殻には「自然に破れる」ということがありません。よって中にいる者はその構造に永遠と依存することになる。
サナギの殻は芋虫のレベルで栄養摂取を続けた結果として、必然的に出来たものでなければならない。つまり自分の努力で作り出した殻だからこそ、自分に必要な組み替えと、殻を破る「自然なタイミング」が直感的に把握される。他人が人工的に作った殻には「自然なタイミング」がなく、ゆえに個体を内部で弱らせてしまう。芋虫が蝶になるためには、自分自身で作り出したサナギを、適切なタイミングで自ら破るという逆説が必要となる。そのことがイニシエーションの役割をはたし「芋虫と蝶」という不連続な谷間を飛翔させる力となるのです。
AUTOPOIESIS 204/ illustration and text by : Yasunori Koga
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