『遊星からの物体X』

古賀ヤスノリ イラスト

 宇宙から飛来した謎の物体X。それは他の生物に接触し、姿をそっくりに変えることができる。 そんな物体Xと遭遇した南極観測隊は、仲間が物体Xではないかという疑心暗鬼の中、過酷な戦いを迫られる。
「見た目は本物であっても、中身は偽物」。監督のジョン・カーペンターは、このテーマに興味 があるようで、のちに「ゼイリブ」という映画でも再び取り上げている。擬態が蔓延した状況下 で起こる疑心暗鬼。これはSF映画であるとともに、社会批判の映画でもあるのではないでしょうか。

vol. 020 「遊星からの物体X」 1982年 アメリカ 109分 監督ジョン・カーペンター
illustration and text by : Yasunori Koga

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『デューン/砂の惑星』

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 フランク・ハーバートの傑作小説の映画化。一般にリンチの大失敗作といわれている映画だが、はたしてそうであろうか。もちろん最終編集権のなかったリンチにとっては悔しい出来だとおもう。しかしフィルムをどう切り取り、どう並べたところで、リンチ質がにじみ出ていて仕方がない。特にアール・デコとH.R.ギーガーをミックスしたような美術が素晴らしい。その悪趣味感はしっかりと『未来世紀ブラジル』や『ロストチルドレン』へと受け継がれていく。製作費は120億円。「デヴッド・リンチに巨額を与えるとどうなってしまうのか」という実験結果がこれである。

vol. 019 「デューン/砂の惑星」 1984年 アメリカ 137分 監督:デヴィッド・リンチ
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『スリーピー・ホロウ』

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 ティム・バートン作中で最も美しい映画。このような、アンドリュー・ワイエスの水彩画のごとき世界観は二度と作れまい。「首なしの騎士」という迷信めいた主題を、主人公が“科学の目” で追っていくあたりの面白さ。リアリズムで迫りつつも、泥沼のファンタジーと化していく展開の意外さ。そして、イマニエル・ ルベッキという名カメラマンが作り出す映像の美しさ。これらの科学反応が不思議な魅力をつくり出している。迷信に支配された村人に理性(頭)がないという意味では、 首が切り落とされるというのは象徴的である。

vol. 018 「スリーピー・ホロウ」 1999年 アメリカ 105分 監督:ディム・バートン
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『ドラゴン・タトゥーの女』

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 この映画の主人公はジャーナリストである。そして物語も彼を軸として、謎の失踪事件を追うかたちで展開していく。しかしタイトルが示すように、内容がどうであれこの映画は“ ドラゴン・タトゥーの女 ”なのである。その圧倒的な“ 個性 ”は、あらゆるタブーを超えて純粋の極みに達している。血塗られた一族の話、強烈な暴力描写、巧みなストーリー展開。これらのインパクトを すべて忘れさせる女。ヘビーなサスペンスではあるが、ダークなラブストーリーとして観ることもできる「ドラゴン・タトゥーの女」である。

vol. 017 「ドラゴン・タトゥーの女」 2011年 アメリカ 158分 監督:デヴィッド・フィンチャー
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『地下鉄のザジ』

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ザジの視点で描かれたパリ。愛すべきキャラクターたちがドタバタを繰り広げ、世にもシュールな世界を演出する。 現実でも非現実でもないこの世界は、現代が失いかけた「遊び」の世界。ザジの毒舌に翻弄されながらも、パリの オトナたちは活気に満ちた人間味をあらわにしていく。この映画が世界中で愛されるのは、オトナたちが子供心を揺さぶられるからなのでしょう。

vol. 016 「地下鉄のザジ」 1960年 フランス 93分 監督:ルイ・マル
illustration and text by : Yasunori Koga

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