「陰翳の作用を離れて美はないと思う」
(谷崎潤一郎)
西洋文化が入る以前にあった、日本独自の美意識。それは照明のない暗がりの部屋で発見した「陰翳の美」。そこに「優雅」や「花鳥風月」もあった。翳りという環境は、物体を風流で古色を帯びた美へと変化させる。文明の発達により、照明で全てを照らした世界は、物と物との間にある陰翳のあやを消し去ってしまう。谷崎は、日本独自の文明を模索しながら、文明の利器を鵜呑みにする社会に警鐘を鳴らす。名文で美を語る随筆は、まさにそれ自体が「美」と言える一冊です。
book / 017『陰翳礼讃』谷崎潤一郎: Originally published in 1939
illustration and text by : Yasunori Koga