『宇宙戦争』

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 地底から現れた巨大マシン。それは遠い昔に宇宙人によって埋められたものだった。科学の差によって圧倒される人間たち。なすすべなく逃げまどう中、少しずつ宇宙人の目的が 明らかとなっていく。
この映画はH.G.ウェルズの同名小説を映画化したもの。賛否両論あって、絶賛する人もあれば駄作という人もいる。個人的にはとても良い映画だとおもう。特に映像センスは抜群。名カメラマン、ヤヌス・カミンスキーのフレーミングと明暗のバランスは見事としか言いようがない。過去の大戦を彷彿とさせる情景。人間が狩られる側に立つことで、我々が動物へ行っている事を再認識させられる。あっさりしたラストも含め、自然淘汰を暗示させる生物学的な映画である。

vol. 031 「宇宙戦争」 2005年 アメリカ116分 監督スティーヴン・スピルバーグ
illustration and text by : Yasunori Koga

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『カッコウの巣の上で』

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 刑務所の強制労働から逃れるために、精神異常を装う主人公。彼が精神病院で見たものは、薬物治療と婦長に怯える患者たちだった。婦長の圧政に反撥した主人公は、病院からの逃走を図ろうとする。
この映画の面白い所は、病院内の人間関係をフロイト的に見ることが出来るところである。 「エス」である主人公は、「超自我」である婦長の監視を振り切り、自由を獲得しようとする。 それを目の当たりにした患者たちは「自我」を広げようとする。 これはまさに精神分析のモデルそのもの。ミロシュ・フォアマンの天才的な演出と、 ジャック・ニコルソンの凄まじい演技が融合したまさに名作。病んだ現代社会の処方箋となりうる映画である。

vol. 030 「カッコウの巣の上で」 1975年 アメリイア133分 監督ミロス・フォアマン
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『パリ・テキサス』

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 妻子を捨てて失踪した主人公トラヴィス。彼は空白の四年間を背にふたたび弟の前に現れる。 不在だった四年間の出来事を受け入れていくトラヴィス。そして再開した息子とともに、姿を消した妻をさがす旅へと向かう。
映画ファンの間では不動の人気を誇るロードムービー。心を閉ざした主人公と、テキサスの乾いた大地が独特の雰囲気を作り出す。ロビー・ミュラーの撮影も実に美しい。ハリー・ディーン・スタントンやナスターシャ・キンスキーの演技も秀逸だ。カンヌでもパルムドール受賞ということで、世界が認める一作である。しかしこの映画は「現実からの逃避」を正当化するような見方が出来るという点に、誤解を生む要素を秘めている。実際この作品全体が語るのは「逃避の末路」である。つまり多くの人々が敬遠しがちな悲劇の物語なのだ。

vol. 029 「パリ・テキサス」 1984年 西ドイツ・フランス 147分 監督ヴィム・ベンダース
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『ゼイリブ』

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 人々に気づかれずに社会を支配するエイリアンたち。彼らは権力の中枢に忍び込み、巧妙な手口で人々を洗脳する。主人公は、ある特殊なサングラスをかけることによってその事実を知る。そして無謀とも思える戦いに挑むのである。
映画の体裁はB級SFホラー。しかしこの作品に込められたメッセージは超A級である。エイリアンたちが人々を支配する手法は、メディアや広告を使ったサブリミナル。これは現代の独裁国家が使う手法と同じものだ。事実を知った主人公が取る過激な行動。そして映画の鍵となる「事実を見透かすサングラス」は如何なる象徴なのか。国家と資本主義のありかたを痛烈に批判した、B級映画の傑作。

vol. 028 「ゼイリブ」 1988年 アメリカ 96分 監督ジョン・カーペンター
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『フィツカラルド』

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 主人公フィツカラルドは、アマゾンの奥地にオペラハウスを建設するという夢を持っていた。 しかしそれは莫大な費用がかかる夢であり、常識を超えた発想であった。 彼は資金を捻出するため、とてつもない計画を立てそれを実行しようとする。
信念をもって夢を追うその姿は、妄想に取りつかれた狂人のようでもある。 しかしその夢が実現した瞬間、人々はそれを理解するのだ。 クラウス・キンスキーの鬼気迫る演技。そして生の映像にこだわるベルナ―・ヘルッオークの執念。 二人が作り出した傑作『アギーレ/神の怒り』に勝るとも劣らない、渾身の一撃。このような映画は今後、二度と撮られないだろう。

vol. 027 「フィツカラルド」 1982年 西ドイツ 157分 監督ベルナ―・ヘルッオーク
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