『ある殺人に関する短いフィルム』

古賀ヤスノリ イラスト

ある殺人者とある弁護士の物語。人はなぜ殺人を犯してしまうのか。そして殺人者を裁くことができるのか。映画の冒頭で弁護士はこう独白する「刑罰は復讐である」。
特殊なフィルターで撮影された、暗く視界の狭い映像。殺人者の心理と弁護士の苦悩がセリフではなくこの映像のスタイルによってダイレクトに伝わってくる。 これほど無駄のない手法で撮られた映画はそうそうお目にかかれない。ヘビーな主題だけに見る側も覚悟を必要とするが、ラストで胸をうたれること請け合いである。

vol. 011 「ある殺人に関する短いフィルム」 1988年 ポーランド 84分 監督:クシシュトフ・キェシロフスキ
illustration and text by : Yasunori Koga

★古賀ヤスノリのHP→『Green Identity』

『ロボコップ』

古賀ヤスノリ イラスト

 この映画はSFというジャンルに分類されている。もちろんロボットが出てくるので見た目はSF映画である。 しかし内容はというと、まさに社会派そのもの。当時のアメリカ社会が”内側”からリアルに描かれている。なぜなら 監督のポール・バーホーベンは母国オランダからアメリカへ移住し、アメリカを体感して撮影に臨んだからだ。 よってこの映画は「ヨーロッパから見たアメリカ社会」が裏のテーマである。この映画の特徴である過激な描写も、 ブラックなユーモアもアメリカを表現するために選ばれた表現なのだ。コップがロボになること自体がすでにアメリ カを表しているのではないだろうか。社会派映画の傑作。

vol. 010 「ロボコップ」 1987年 アメリカ103分 監督:ポール・バーホーベン
illustration and text by : Yasunori Koga

★古賀ヤスノリのホームページ→『isonomia』

『裸のランチ』

古賀ヤスノリ イラスト

 ウイリアム・バロウズの同名小説の映画化である。小説のほうは、文章を無作為に切り取りとって繋ぎ合わせるカットアップという手法がとられている。 つまり意味不明な体裁をしているのだ。それを映像化しようという発想が凄い。監督のクローネンバーグは昔から、バロウズのファンだったようである。
映画のほうはカットアップではない(編集とはカットアップなのだが)。映像は琥珀色。オーネット・コールマンのサックスが気だるい空気を乱反射させ、その中を役者たちがまどろむ。
この世界観には賛否両論あるだろう。しかし映像のインパックトは大きく、今でも似たような質感の映画を見かける。バロウズ本人のエピソードが数多く盛り込まれてるので、「裸のバロウズ」というサブタイトルで親しみたい一品である。

vol. 009 「裸のランチ」 1992年 イギリス・カナダ117分 監督:デヴィッド・クローネンバーグ
illustration and text by : Yasunori Koga

★古賀ヤスノリのHP→『Green Identity』

『狼たちの午後』

古賀ヤスノリ イラスト

 銀行強盗に走る主人公。労働者階級の苦悩が引き金となって起きた事件は、少しずつ人々の共感を生んでいく。それは人質になった銀行員とて例外ではなかった。
格差が引き金となった事件があとを絶たない現代。この映画のメッセージは今なお威力を失っていない。実話に元づいた映画だけに、無駄を排した演出と、セミドキュメンタリータッチのカメラワークが効果的。のちに、この映画を着想とした映画が多数作られているという事実が、傑作であることを物語っている。エルトン・ジョンのオープニングソングが心に響いてならない。

vol. 008 「狼たちの午後」 1975年 アメリカ125分 監督:シドニー・ルメット
illustration and text by : Yasunori Koga

★古賀ヤスノリのHP→『Green Identity』

『タクシードライバー』

 この映画はロバート・デ・ニーロの表情に全てが込められている。監督のマーティン・スッコセッシは、監督にならなければ牧師になっていたというだけあって、善悪をありきたりの二分法では描いていない。脚本はホール・シュレーダー。脚本が完成した時点で傑作であることを確信したらしく、あとは誰に撮ってもらうかの問題だったらしい。しかし実際は予想をはるかに越える出来となったのではないか。血のしたたるような傑作

vol. 007 「タクシードライバー」 1976年 アメリカ114分 監督:マーティン・スコセッシ
illustration and text by : Yasunori Koga

★古賀ヤスノリのHP→『Green Identity』

Scroll to top