巨匠アッバス・キアロスタミ監督の『風がふくまま』を観る。
ある特殊な葬儀を取材するため地方の村を訪れた主人公。彼は死の間際にある老婆の葬儀を待つ。仕事のために人の死を望む自分にうしろめたさを感じつつも、仕事を全うしようと努める。しかし予定に反して老婆は死なず、時間切れとなり企画も打ち切りとなる。それまでの使命から解放された主人公は、死を望んでいたはずの老婆のもとへ医者を案内する。
人は目的に支配されると、他人の死を望むほど墜落する。その究極状態が戦争でしょう。映画の主人公は、ある支配から解放された瞬間から人間らしさを取り戻します。本来従うべきことが見えなくなる状態を、成果主義という病が作り出す。戦争を回避するヒントすら、この映画には隠されているのではないでしょうか。
AUTOPOIESIS 0053/ illustration and text by : Yasunori Koga
古賀ヤスノリのHP→『Green Identity』