『進化とはなにか』

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「われわれは進化を現場で押さえることができない」
(今西錦司)

 “生物には自然淘汰では説明できない形態がある”という着想から、個体レベルの進化ではなく、種レベルでの進化の発想に行き着く。ダーウィンが唱えた「ランダムな突然変異」による自然選択説に対し、「方向性をもった突然変異」を対置。これは生物に主体をもたせるいわゆる目的論として、自然科学の世界ではタブーとされてきた視点である。さらに進化する種自体が、それを取り巻く一連の「エコシステム」に組み込まれたものであるというホーリズムを展開する。進化論の源流であるラマルクを蘇らせたような、今だ新しい″開放系”種の社会構造論である。

book / 008『進化とはなにか』今西錦司: Originally published in 1976
illustration and text by : Yasunori Koga

古賀ヤスノリHP→『Greenn Identity』

『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』

「(彼らは)“労働と産業活動を神に対する義務”と考えている」
(マックス・ヴェーバー)

 比較宗教社会学によって論じられた「資本主義解体新書」とでも呼ぶべき一冊。この本によれば、プロテスタンティズム(特にカルヴァン主義)の世俗的禁欲と天職倫理(救いを得るための労働)が、資本主義の原動力である「利潤追求の合法化」の精神をつくりだしたという。禁欲的な“節約”が、結果的に資本形成と生産的な利用を促す。さらに天職を「救済を得る最良の手段」とすることで、資本主義的“営利”生活が神に添うものとなる。資本主義の宗教的な構造を明らかにした、まさに資本主義を超えるための必須の論考です。

book / 007『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』マックス・ヴェーバー: Originally published in 1920
illustration and text by : Yasunori Koga

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『自己・あいだ・時間』

「現在の病態が患者の人生にとってどのような意味をもっているのかを見極める」
(木村敏)

 日本を代表する精神病理学者による論文集(1968年~1978年)。決して単純化しては語れない、分裂病(統合失調症)者についての臨床的な知識をこの本によって得ることができる。しかし前半には鬱病に対する重要な論文も収められているので、二つの病態の比較も可能だ。特に「分裂病と時間論」において展開される「ノエマ・ノエシス」の概念から把握される自己や、「‟前夜祭”と‟後の祭り”」といった分裂者の時間的病態の把握などは、明らかに哲学者としてのセンスがうかがえる。あまりにも貴重な経験と情報がが詰まった一冊です。

book / 006『自己・あいだ・時間』木村敏: Originally published in 1981
illustration and text by : Yasunori Koga

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『メノン』

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「知が導くとき幸福を結果し、無知が導くときは反対の結果になる」
(プラトン)

 「徳」とはなにか。それは教えられるものか。訓練によって身につくものか。あるいは、もともと素質として備わっているものなのか。これらの「徳」への問いを、プラトンは対話形式によって深めていく。主人公ソクラテスは、対話者メノンに問いかけ、ときに混乱させることによって、その人がもともと持っている「知」を再発見させる。知らないことを「知っていると思い込む」ことが、“探究”の意思をなくす「知的怠惰」の原因である。それがこの本のもう一つのテーマ。中学生にでも読める内容だからこそ、生徒と教師が一緒に読み、同じ問いを考えることができる。そんな「真の教育」を促す“哲学の教科書”と言える一冊です。

book / 005『メノン』プラトン: Originally published in BC387-
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『シェイプ・オブ・ウォーター』

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 児発話障害を持つ女性と半漁人のラブストーリー。言葉を話せない主人公は、言語に支配されない純粋な心の持ち主。そして現地では神と崇められる半漁人は、規格外で社会から拒絶される“英雄”(ジョゼフ・キャンベル)として見ることができる。偏見の目では見ることのできない大事なものがある。その大切なものは、言語に頼らないからこそ、真のコミュニケーションとして交換可能となる。物質や権力、短絡的な仮想コミュニケーションが支配する現代において、決定的に喪失している大事なもの。それはのは「愛情」ではないだろうか。ギレルモ・デル・トロ監督は、物質主義が蔓延した現代において、人々に「愛情」を思い出させようと本気で思ったのかもしれない。

vol. 045 「シェイプ・オブ・ウォーター」 2017年 アメリカ 123分 監督 ギレルモ・デル・トロ
illustration and text by : Yasunori Koga

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